Chapter2 夕日

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またしばらく通りを歩いていると、 「お嬢さん、どこから来たんだい?」 「疲れたろう、これ飲んでお行き。」 雑貨店の奥さんから笑顔で飲み物を差し出された。 「おいくらですか?」 と、お財布を出そうとすると、 「何言ってるんだい。 旅人に親切にするのは当たり前さ。」 と、親切な笑顔が返ってくる。 歩いて汗ばんだ額。 シュワっとはじけるサイダーの刺激が喉を伝って心地いい。 店先のベンチで少し休ませてもらっているその間も、雑貨店の奥さんは、どこから来たのか、どんな暮らしをしているのかなどを、ニコニコしながら聞いてくる。 ここは、滅多(めった)に旅行者が来ないのだろうか? そういえば、さっきからずっと街の人たちの視線を感じる気がする。 目が合うとみんなニッコリ人懐っこい笑顔を向けてくれるし、どの人も親切だ。 でも、妙に注目されているような気がする。 「どうしたね? お腹が空いたかね?」 お婆さんが笑顔で瞳を覗き込む。 ダメだ。 こんな風に周りを疑ってばかりいるから疲れてしまうんだ。 自意識過剰だ。 「大丈夫です。」 そう答え終えないうちに、木の下でタバコを吸っていたおじいさんが、「これ食べな。」と、くしゃっした笑顔で竹の葉で包んであるおにぎりを差し出してくれた。 優しい街 優しい人たち 疲れて固くなっていた心が、だんだんほぐれていく。 こんなに優しい場所もあるんだ。
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