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芸術家というのは手先が器用であるのに、心はこうも不器用なのだろう。
画家として成功を収め、妻をむかえて息子が生まれた。
笑顔の絶えない家庭。
ずっと望んでいたはずなのに、ある日言い知れぬ不安に苛まれた。
芸術家の技量と幸福は反比例するのではないかと。
私は世間に認められた画家であるだけに悩みは深く深く突き刺さる。
ただ、私の名前を有り難がっているだけではないのか、と。
家族の生活に支障はない。
画壇で成功すれば個展はいくらでも開けるし、絵も売れる。
家族との時間も持てる。
妻の亜香里は私を立ててくれるし、息子の亮太は私を慕ってくれる。
不安を口にすれば二人とも親身に聞いてくれるだろう。
だが、私が芸術家として求めるもの。
それは、ハングリー精神だ。
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