父でありたい

3/8
前へ
/8ページ
次へ
それに気付いたとき、私は亜香里も亮太も捨てて、一枚の離婚届を残して家を出た。 冗談だと思うだろうか? 探すだろうか? そんな気持ちにもなったが、亜香里は電話の一本も寄越さなかった。 芸術家の私が必要であって、夫としての私、父としての私には価値がなかったのかと肩を落とした。 何処に行こうとも私は逃げられないのは知っている。 それだけの名がある。 分かっている。だが、画家として私は貪欲に生きたい。 それを叶えるために逃げたんだ。 帰るまい。 そう誓ったのは亮太が小学校にあがる少し前のことだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加