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……歴史のあるこの学校は遡ること、昭和時代から存在していた。
その時に、一人の女子生徒がいた。
名前を小町。可愛らしく皆から愛される少女だったらしい。
そんな彼女は、恋をする。それは決して叶わぬ恋だった。
「叶わない恋?」
「ええ。その相手は……年上の先生だったの。それも、結婚して妻子もある」
それを聞いて思わず顔をしかめる。
先生の話は好きだが、私はこういった下世話な話はそこまで好きではない。
あまり人の情念の篭った話は聞いていてすっきりしないからだ。
「その小町ちゃんは、どうしたと思う?」
「どうしたって……諦めたんじゃないですか? 普通は諦めますよね」
「いいえ。小町ちゃんは諦めなかったの」
先生は笑顔でこういった。
彼女は毎年、春の桜の下で告白を続けたのだと。そう、あの美しい桜の木の下で。
「……それって」
「小町ちゃんがその先生に惚れたのは一年生……入学してから三年間続けたわけね。まあ、それ以外でもアプローチはしていたらしいけども」
それを聞いて尚更恐ろしさを感じる。小町という愛される少女と言う情報からそぐわない情念に満ちたその執着に。
初恋だとしても、普通は諦める。断られたなら尚更だ。だというのに、それでもなお彼女は先生を忘れず思い続けてひたすらにアプローチをしていたのだという。
美しい恋愛だと取るか、恐ろしい執着だと見るかは分かれるだろうが……。
「そうして、三年後の春。卒業前にね。先生は小町ちゃんの告白を受け入れたの」
「えっ? 奥さんは……」
「奥さんとは別れてしまったらしいわ。諦めなければ恋は叶う……そして、小町ちゃんは桜の木の下で先生に手紙を渡していたの。恋文を。そうして、この学校の噂でこういうモノが出来たわ。『桜の木の下で告白をすれば成就する』って」
「いや……それは……」
聞いて思った。
それは成就ではないのじゃないかと。
その話から、そんな噂になるには流石に重すぎないかと。
「得てして、噂というのは捻じ曲がるものだから。いい結果だけを抜き取ったり、悪い部分だけが強調されたりね?」
「そうなんでしょうけど……」
「……それで、ここからは私の調べたもう一つの話」
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