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ここは、人と神様の住む場所の中立世界、『茜灯篭』。茜灯篭には、神様になろうとしている妖の様な存在が、愛されながら暮らしていた。
とある日の事、雨が降っている。
薄暗い道を一人の男が着物の裾を濡らしながら、家へ帰っている途中だった。
和傘を叩きつける雨の音は、誰もいない道にはうるさすぎると、この男ユキは思いながらボサボサの黒い長髪を揺らしていた。
ユキは神様になろうとしていた。
神様になるには課題があり、ある事を百年間、人の時間の速さで言うと十年続けなければならない。
ユキはその課題を続けて99年と358日の日を過ごし、あと七日で神様になろうとしていた。
ユキはボサボサ前髪を払った。すると、なぜか帰路を歩く足を止めた。
家の塀の横に白い髪の子が力無く座っているのが目に入ったらからだ。おそらく人の子。
茜灯篭は、人と神様の世界を繋いでいるため、たまに人が入って来てしまう事があるのだ。
ユキはゆっくり歩きながら、その人の子に近づいた。
前にしゃがみじっと顔を見つめるが、少しも動く様子がない。
(死んだか…?まだ幼いだろうに。)
ユキは立ちあがり、その場を去ろうとしていた時
「……さん、……なさい。」
声が聞こえた気がした。
(……?)
「お母さ…ん、ごめ…なさい…。」
(この子供からだ、生きている。)
ユキは傘を投げ捨て、その子を抱き抱えた。
神様の99年と358日が終わった日だった。
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