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人造人間
あの日から博士は変わってしまわれた。
博士の想い人が死んだ。
それがきっかけだった。
あの日から博士は……。
今の博士に聡明で冷静沈着な天才科学者だった頃の面影など、もう……。
研究所の窓に向かい、静かな瞳で空を睨みつけながら、博士は言う。
「……私は彼女のことが、今も、忘れることができない……」
「……博士……」
「なぁ、助手君。……私は、もう一度、彼女に会いたいよ……」
「……博士……」
「というワケで助手君。あんまり会いたかったから、ちょっと彼女の人造人間を造ってみた」
「……博士……?」
「いやぁ、初めて造るものだからね。まぁ自信はないんだけれど、でも、それなりにできたと思うのだよ。……ああ、大丈夫。ちゃんとネットで造り方は調べてるからね」
「博士ええェェェェェェッッ」
……博士は変わってしまった……。
まるで、『最近カレー食べてないなと思って、カレー作ってみちゃった』的なノリで人造人間を造る博士。
白衣を着た中年男性。
それが魚籠田比呂志博士である。
でもって、ここは都内某所にある魚籠田博士の秘密研究所である。
秘密ということなので細かいことは端折る。
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