其の一 アルバイト探し

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「あれ?お客様?」 女性店員さんが私に声を掛けてきた。 「ここの喫茶店もしかして初めて来たでしょ?」 「あっ、はい……。」 「やっぱり~。 あっ、ウチの名前は多々羅 美月! この喫茶店の副店長をやってます! 普通に美月さんって呼んでね! あっ、美月お姉ちゃんでも可よ!」 軽いなぁ、この人…。 「そうなんですか~。 じゃあ、隣にいる男性がここのマスターさん?」 「大正解! マスターの名前は多々羅 遥斗! コイツ、すんごいモテるんだよね~。 この前も近所の主婦に告られていたんだよね~。」 「ちょっ…! バカッ! 初めて来たお客様に言うなっ!」 マスターが軽くキレながら珈琲を淹れていた。 ん?待て、さっき主婦って言ってたよね? 聞かなかったふりをしておこう…。 イヤな予感がするから。 「んで、貴女のお名前は?」 まさか私の名前を聞いてくるとは…。 また来るかわからない客の名前を聞くなんて変わっているわ…。 「袴田 永和です…。」 「へぇ~、永和ちゃんかぁ~。 可愛い名前ね! でも、なんでこんな地味な喫茶店に足を運んでくれたの?」 「おい、こんな地味な喫茶店って言ったよな? さりげなくディスるな。」 なんかマスターの言い方、初めて会ったときの口調と違う気が……。 あれ? そういえば、二人共同じ名字だったよね? 夫婦だったのかよ…。 「えっ?いいじゃない別にぃ~。本当の事じゃん?」
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