霧の猫

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暖かい霧が薄幕のように辺りを包み込む朝、仁美が飼っている猫は必ずどこかへ出かけてゆく。まだ外が暗いうちに、寝ている仁美を起こしに来て外に出してくれと要求するのである。 部屋の中にいるのに、どうして霧が出ているのがわかるのだろう。それが仁美には不思議だったが、猫特有の勘のようなものが働くのかもしれない。 猫と暮らしたことがある人は誰しも経験があると思うが、それまで別のことをしてた猫が急に天井の隅を熱心に見つめだしたり、何もないところで獲物を狙うようなポーズをとったり、あれはいったい何を見ているのだろうか。 仁美の猫はジェリーという。アニメの"トムとジェリー"から名前をもらった。ジェリーは霧の朝早くに出かけて夕方に帰ってくる。どこに行ってるのかわからないが、帰ってきた時は満足そうな表情をしている。
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