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猫を抱き上げた仁美は、その体に何かくっついているのに気が付いた。赤い花びらのようなものが、いくつも・・
それにこの香りは・・バラね。
バラの花びらが猫の身体にくっついていた。でも、もう12月だから、どこのお宅の庭にもバラなんか咲いていないはずだ。
「ジェリー。このバラの花びらをどこで・・なんて聞いても答えられないよね。猫だし」
猫は仁美に抱き上げられて、ゴロゴロ喉を鳴らすばかりである。
仁美は想像する。
どこか霧の壁を抜けた向こうに、猫しか行けないような花園がある。
人にはたどり着けない、近くて遠い、バラの咲き乱れる楽園が。
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