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音能力者
「この熱ーい思いをいつまでもー」
俺の名前は折北旬(おりきたしゅん)。二十三歳。
今日もお気に入りの金髪をバッチリ、オールバックに決め、東京の某駅の前で一人、歌っていた。
大学卒業後、歌手を目指して、あらゆるオーディションに受けたが全滅。
就職はせず、こうやって日々、どこかで一人ギター片手に歌っている。
俺には音楽の才能があると自負している。カラオケ採点では九十点台を取ったことがあるし、ギターも独学で学んだ。作曲もピ◯プロで学び、いくつも曲を作り上げた。
今は目が出ていないが諦めなければ夢が叶う。そう思ってるし、そう誰かが歌っていた。
「届けー」
歌い終わると、俺は気持ち良さで感極まっていた。さずかし、俺の歌を聞いた人は感動したことだろう。
俺はあたりを見渡した。
しかし、俺の歌を聞いている人はほとんどいなかった。お金を投げ入れてもらうための箱には十円玉が三枚しか入っていなかった。
「いて!」
俺の体に何かが当たった。下には缶が落ちていた。
「下手くそな歌を歌ってんじゃねえぞ! バーロー!」
酔っ払いのサラリーマンが俺に缶を投げたようである。俺は頭に血が登った。
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