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【ルート・ポニ男】
ごとごとと電車に揺られ、乃ノ太郎はおおあくびをする。
初日であった昨日は気付いたらオフィスにいたのだから今日が初めての通勤である。
『案外通勤電車って空いてるもんだな…ピークと時間帯がズレてるのかな』
乃ノ太郎、つり革に掴まるどころか座席に溶け出してしまいそうなほどグッタリと座席に体をなじませていた。
左右に人はみっちりいるものの、優雅なものである。
しかし気を引き締めねばならない。
私は恋愛シミュレーションゲームの主人公。
会社に着く前にとりあえず立ちそうなフラグの予習をしておこう。
大事なフラグをへし折っては大変である。
まず最初に出会った攻略キャラ候補は【東雲係長】である。直属の上司。
完全に妄想であるが若い頃はワンコ系だったに違いない。
背は低めだが頼れる雰囲気で、完全に妄想であるがちょっと抜けてるところもあるところがご愛嬌。
そしてたぶん仕事ができる、たぶん。
しかしなぜか席が離れている上に多忙であるようなので最初のうちはフラグが立ちそうにない。
おそらくは何人かのルートをクリアすると解放されるキャラクターだろう。
ただし彼には重大な問題がある。
左手の薬指に指輪があるのだ。
つまりゲスフラグである。
ここは乃ノ太郎個人としては折りたいフラグであるが、ゲームの主人公としてはやはり…いや、嫌だ。
面倒なことが嫌いな乃ノ太郎、早速フラグ放棄を心に決める。
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