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急がなければ。締め切りは夕方だ。遅れれば世界が終わる。比喩や誇張じゃなく本当に地球が滅びてしまうのだ。ただ単に座して死を待つ他にないのなら誰もが静かに最期を迎えられるだろう。だが、人類が一丸となって9回裏ツーアウト満塁の場面にこぎづけ、逆転サヨナラ勝ちが確実視された状態で、予備を含めたバットがないとなったらどうなるだろう。目前に勝利を信じて不戦敗を喫する。 いつか勝てばいいと言う慰めは通じない。人類全体が夏の甲子園に立たされている。 文学的に表現するなら、以上だ。 持たされているのは野球バットではなく、筆だが。 とにかく、人はこれを試練という。
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