雨の日は憂鬱

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「ごめん、それ俺がつけたアダ名」 少しはにかむように答える男の子。 「俺は今降ってる雨に宮崎県の宮で、下はカタカナでヒロ、雨宮(あまみや)ヒロ。君の名前は?」 え?何で自己紹介? でも自己紹介をされてしまったし、ハンカチを拾ってくれたし、返さないワケにはいかない……。 「松丘(まつおか)、ですけど……」 「下の名前は?」 「美咲(みさき)ですけど……」 「美咲ちゃんって普段自転車とか?雨の日だけバス?」 「そう、ですけど……」 「やっぱりか」 彼が納得したようにニカッと笑ったその時、バスが緩やかに停まった。 どうやらバス停に着いたらしい。 「あ、残念。俺、降りなきゃ。美咲ちゃん、帰りに会えると良いな」 彼は眉を下げる。 彼の降りる駅らしい。 彼はバスから降りるとビニール傘を差して歩いていった。 残された私はハンカチを握りしめてイヤホンを外したままの状態のまま考える。
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