バケツ一杯のお風呂

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そんな地方視察から首都に戻り、拠点にしていたゲストハウスに戻ると、まずお風呂が恋しくなる。長時間ガタガタと未舗装の道を揺られてきたので、肩凝りもひどい。ただし、首都でさえバスタブに熱いお湯をはるなど、夢のまた夢だ。お湯をつくるには、水とエネルギーがいるが、この国では両方とも不足している。断水と停電は日常茶飯事だった。 そこで、私のご褒美風呂は、鍋とバケツで作った。庭の井戸から汲み上げた水を一番大きい鍋で沸騰させて、バケツに入れて冷たい水と混ぜ、人肌より少し熱いお湯をつくる。それを持って、バスルームにこもり、首や肩にお湯をかける瞬間がなんともいえず、気持ちいい。 風呂あがりの顔は相当晴れ晴れとしていたらしく、同じゲストハウスで暮らしていたイギリス人の上司は、風呂の効果はすごいね、魔法みたいだ、と毎回関心していた。
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