STORY.1 始まりの音

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 高校に入って、最近考えること。  それは、今まで俺が散々くだらないと思っていた恋愛について。  中学に上がったころから、周りの奴はやっきになって彼女を作ろうともがき始めた。  はっきり言ってそういうことにまったく興味がなく、冷めた目でしか見れなかった俺は、そんな奴らを見るたびに、こいつあほなんじゃないか? と思っていた。  比較的仲の良い奏斗には、お前大丈夫か? とよく聞かれた。  奏斗はまさしく遊び人という称号をもらっている奴で、本人はそれをまったく気にした様子もなく、片っ端から学年で可愛いといわれている女子と付き合いまくっていた。  女子の方もそんな軽い付き合いで満足しているらしく、別れるときは結構あっさり別れていた。まあ中には修羅場もあったらしいけれど。 「お前、なんで彼女作んねーの? 圭吾ならすぐできるだろ! ぜってー人生損してる!」  中学時代、何度もそう奏斗に言われたけれど、俺には全然効果なし。  恋愛なんてめんどくさいだけだし。  奏斗を見ているとうんざりしてくる。ふと気付くと隣を歩いている女子が昨日とは変わっていて、聞くまでもなくああまた別れて違う奴にしたのか、と思う。  俺が他の女としゃべると機嫌悪くなるんだよ。  涙目の上目遣いってほんとそそられるんだよなー。  とか、奏斗はやたらと楽しそうに話していたけれど、やっぱり俺は興味なし。  いや、俺にだって人並みに性欲はある。  けれどそれのために恋愛するっていうのも馬鹿らしかったし、かといって遊びで付き合うのも嫌だったし。  というか、俺って遊びの恋愛はできないと思う。奏斗を見ていると切実にそう思う。  あんなふうに女子に付きまとわれたらうざったくてしかたない。それに笑顔で対応している奏斗には本気で感心する。  ……というのがまあ、俺の中学時代の恋愛論なわけで。
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