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「圭吾ー」
いったい何の縁なんだか、奏斗とは高校まで一緒になってしまった。
いや、別に嫌な訳じゃない。ちょっとおちゃらけすぎているけれど人間的にはいい奴だし、つるんでいていろいろ特なこともあるし。ただ、こいつの近くにいると女子が群がってきてしょうがない。それがうざい。
いつもならそんな理由で、奏斗にこっち来るな、という視線を送るのだが、今は放課後。教室には誰もいない。
まったくもって最悪なことに、俺はこないだの数学のテストでかなりの悪い点数を取り、追試を受けさせられていた。試験監督は何故かいない。というかこの学校自体、そういうのにてきとうだ。
こんなふうでいいのだろうか、とも思うが、こっちとしてもその方が気楽だから文句は言わない。
「何だよ。追試なんてやってんの?」
そう言いながら奏斗は俺に近付いてきた。椅子を引いて俺の前に座ると、こちらに振り返ってくる。
「あと一問じゃん。……えーっと、それ、答え2」
奏斗の言葉を受けて、俺は無言で解答用紙に「2」の数字を書き込んだ。答えを教えてくれるとは、何か俺に今すぐ話したいことがあるらしい。
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