STORY.1 始まりの音

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「お前、今度の日曜空いてない?」  そして予想通り、奏斗は俺がテスト用紙をしまったと同時話を切り出した。 「なんで?」 「いや、あのさー……」  柄にもなく奏斗は言い淀む。 「そのー、なんだ、えっと、一緒に遊園地行ってほしいんだけど」 「はあ?」  遊園地って、あの遊園地か?  奏斗からそんな言葉が出てくると思わなくて俺は耳を疑った。 「実をいうとすでに女子2人誘ってあったりするんだよな、これが。 頼む! チケット代奢るから来てくれ!」  ぱんっと両手を合わせて、奏斗は頼み込んできた。  つまりは、俗に言うダブルデートってやつか。 「相手、誰?」  これを聞くのは当たり前だろう。相手も知らないんじゃ話にならない。 「えっと、柏田美香と相沢優」  一瞬聞き逃しそうになった。 「……は? 柏田美香? もしかして、中2の時俺と同じクラスだった奴?」  俺が惚けた表情でそう聞くと、奏斗はそうそう、とこちらに身を乗り出してくる。 「美香ちゃんマジ可愛いよな。キレイなのにそーいうの鼻にかけてないし、性格もめっちゃいいし」  奏斗は嬉々とした表情で話を続ける。 「中3の時からずっとかわいいなとは思ってたんだけどさ、なかなか機会なくて。だからマジ今回がチャンスなんだよ! 頼む、圭吾! 一緒に来てくれ!」
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