STORY.1 始まりの音

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 目の前の奏斗を見ると、奏斗はまだ必死に俺に手を合わせていた。  そしてふと思う。  そっか。2年のとき奏斗とは違うクラスだったから、一時でも俺と美香が仲良かったこと、こいつ知らないのか。  何だか、それもそれで複雑だ。  けれどどうしてか俺は奏斗の頼みに頷いていた。 ――今回は、違う。  それは、本当に何となくだった。いわば直感というもの。  いつもの奏斗だったら、ダブルデートなんて遠回りなことはせずに、すぐ相手に声をかけ仲良くなり、告白する。  今回はどこか違う。いつものようにおちゃらけて話しているけれど、奏斗は本気だ。  脳内で何かが警戒音を立てていた。  でも、俺はそれに気付かないふりをした。
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