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優斗さんのこと、智紀さんと会ってたときのこと、そのときの気持ち、話してきた。
『智紀さんと会うのは本当に楽しかったし、本当に好きだけど……。でも優斗さんに対する"好き"とは……違うんだ』
そう言った俺に智紀さんは苦笑して俺の頭を撫でた。
『あーあ、振られちゃった』
『ごめん』
『謝らなくていいよ。勝率は3割程度かなって思ってたし。まぁ……かなり落ち込むけど』
『……ごめんっ』
『謝らないで、謝られると逆に引きとめたくなる』
『……え』
智紀さんはクスクス笑って、俺の頭に手を置いたまま顔を覗き込んできた。
『……正直、優斗さんより俺と出会うのが早かったら捺を好きにさせていた自信はあるけどね』
『……』
『まぁそんなことただの負け犬の遠吠えだけど。――でも、優斗さんと幸せになって、捺くん』
『……ありがと』
もう一回俺の頭を撫でた智紀さんはすっげぇ優しく笑ってくれて。
俺は本当に申し訳ないやら、ずっと一緒にいてくれたことを感謝しながら、笑顔を向けた。
『じゃ、最後に……。なーつ、キス、していい?』
少し気持ちが落ち着いた俺にいきなり智紀さんがそんなこと言いだして、は?、って言いかけた瞬間。
唇が――俺の頬に落ちた。
『っ!!』
びっくりして頬を押さえる俺に智紀さんは屈託なく笑った。
『優斗さんとお幸せにっていう餞別?』
『餞別って!!』
『別にほっぺだからいーでしょ』
『と、智紀さんー!!』
「……」
って、最後まであの人はあの人だったな、なんて回想終了。
「智紀さんから、なにかされた?」
「えっ?」
思い返していた俺の顔を覗き込んで優斗さんが言う。
「顔真っ赤だよ」
「え、いや、なんか"優斗さんとお幸せに"って餞別にほっぺたチューされただけ! それだけだから!!!」
「へぇ――、それは妬けるね?」
「……へ」
ぽかんってしたら手を引っ張られて――抱き締められた。
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