第一章 ある日の山田さん

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『そーいや陽くんに会いに行くんだっけ? いつだったか、握手会に向けて痩せるゾ☆とかキモイこと言っとったな』  よく覚えてるな、こいつ。  陽くんに会うのに無様な姿では行けない。ダイエット頑張ったし、服もいいやつ買ったし、コスメもちょっと奮発した。 『聞いて驚けです。三か月で四キロ痩せた』 『うそん、毎年毎月痩せる痩せる言ってるけど五年間ほぼ同じフォルムじゃん山田さん』 『山田、やる時はやる女です。お肌も透明感出てきた気がする』  カッコつけて透明感とか言ってみたのはいいものの、最近どの化粧品もやたら透明感を宣伝しているがそれって結局なんなのだろう。色白になるの? キメが整うの? 化粧が薄くなるの? ガッキーになれるの? ガッキーになれるなら欲しいよ、透明感。 『やまちゃんの体型で四キロってかなりじゃん。そのまま透明になって消えて』 『は? オッチャンが先に消えて。ついでに社会的にも消えて。てかオッチャンこっち来るんですか?』 『久しぶりに創パくらい行くかと思って。明日仙台着の予定』  創パ、つまり私たちが大学時代に所属していたサークルの創立記念パーティーが明後日の日曜に開催される。このくだらないLINEに付き合ってあげている相手はサークルの先輩だった人だ。確か私の四つ上。掛川優一、仲間内ではゆいと呼ばれている。
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