第一章 ある日の山田さん

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『ゆいさん前日入りですか、気合い入ってますね』 『幸太やあっくんも来るらしいやん? せっかくやし』  深道幸太さんは私の一つ上の先輩、あっくんこと東城篤は同期である。ゆいさんが来仙する主な目的は彼らと麻雀でもやるためだろう。どちらかというとパーティーはそのついでだ。 『私はパーティー行く気ナッシング。てか明日もあるんでそろそろ寝ますわ』 と、無理やりLINEをぶった切ってスマホを放り投げた。  夜更かしはお肌に悪い。透明感大事。陽くんに最高のコンディションで会うためにもさっさと風呂に入って寝よう。  風呂にお湯を張っている間にちらっとスマホを見ると、オッチャンから返信が来ていた。 『夜更かしはお肌に悪いからな、はよ寝な』  ゆいさんと同じこと考えていたのがなんか悔しい。 『せっかくお前アナゴさんくらい立派なタラコ唇なのにカサカサになっちゃうよ。ついでにそのまま永遠に寝てて』  アナゴさんは盛り過ぎ。石原さとみと言ってくれ……いやなんでもない。 『ゆいさんの遺言聞くまでは死ねませんわ~。唇のケアさぼるとすぐバリバリになる。面積のせい?』 『唇薄い人って良いよな。儚い感じして』 『喧嘩売ってんですか?』  私はこの後、念入りに唇のお手入れをした。お風呂でスクラブ、そしてリップに唇のパック的なやつ。唇だけでも石原さとみになれただろうか。
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