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昇天中は時間の流れが早いらしく、帰りの新幹線はあっという間だった。改札を出てエスカレーターを降りる。その先のステンドグラスを見ると急に現世、否、現実に引き戻される感覚に襲われた。
嫌だ!
もう少し余韻に浸っていたくて、目を閉じて陽くんの笑顔、声、手の感覚を脳内再生する。手は握手モーション。そう、この手に陽くんが触れてギュっと握ってくれたんだ。陽くん潔癖症なのに……ああ! 握手した後に目元ヒクつかせながらアルコール消毒してる陽くんが見たい!
「お前オバQみたいな顔で何やってんの」
はっと目を開ける。現実とはかくも残酷である。人の唇をオバQ呼ばわりする人間を私は一人しか知らない。
「どっちかってばゆいさんのが似てますよねハゲ」
「分かる、最近髪の毛抜ける」
なんでこの幸せな日にゆいさんに会うんだよ。落差がものすごい。
「今九時ですよ、こんなとこで何やってんすか」
「LINEしたやん?」
スマホを見ると確かにメッセージが来ていた。『帰ったらメシ行くべ』知るかハゲ。
「え、待ってたんすか? ストーカーかよ、変態。幸太さんとかあっくんと遊んでると思ってた」
「幸太は夜は彼女に会うって。あっくん明日シフト早いらしい」
「なるほどね、一緒にメシ行ってくれる人が私しかいないと」
ゆいさん友達いないですね、と大げさに鼻で笑う。
「ホンマそれ。お前フットワーク軽いから誘いやすい」
フットワークの軽さには自信がある。自称フッ軽おばさん。
「てか今日のやまちゃんかわいくね?」
「そらそうよ陽くんよ」
イベントがあると簡単に上がる女子力、しかしなにもないと絶対に上がらないそれもまた女子力。
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