第二章 ご機嫌ルンルン丸な山田さん

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「今日はかわいいけど三回に一回くらい茹ダコみたいな感じやでお前」 「それ三億回くらい聞いた。私今日陽くんに会って幸せだったので帰ります」  これ以上ゆいさんに幸せをぶち壊しにされてたまるか。今日という日を噛みしめていたいのに。 「は? せっかく待ってたのに」 「誰が待っててくれって頼みましたか変態オジジ。どうせなら福士蒼汰が良かった」 「そこ新堂陽じゃねーの?」 「陽くんは私のために待ったりなんかしないの」  握手会での陽くんの神対応は有名だが、プライベートでは食事すら面倒で主食はチョコ、ベッドで一日ゲームして、城の模型作りが趣味で、友人を玄関で着替えさせるくらい潔癖症で超合理主義。そんな陽くんが私を駅で待つなんてありえない。  けーこちゃんっ!  ごめん陽くん。待った?  いや全然、俺も今来たとこ。じゃ帰ろっか。  うん!  ねーわ。  そんなの私が好きな陽くんじゃない。しかしゆいさんは不可解そうに首を傾げた。 「俺なんかなっちゃんの汗でご飯炊きたいって思ってるのに」  なっちゃんとはゆいさんのLINEアイコンになっているアニメの女の子だ。変態拗らせすぎ。キモイ死んで。 「いい加減腹減ったから行こうぜ」 「だから私帰りますって」 「エビチリ奢ってやるから」 「行きます」  好物を出されると食い意地が勝った。食べても食べてもお腹減る、だって成長期だもん。横に。  時間も時間なので適当な中華料理チェーン店に入った。ゆいさんの奢りなので大好物のチャーハン、エビチリ、餃子をお腹いっぱい食べた。  帰りは家まで送ってくれた、というか頼んでないのについてきた。帰り道は街灯が少なく、それでなくても経験上私には痴漢だの変態だのが寄りつきやすい。小柄で大人しそうな見た目だからだろう。ゆいさんが隣にいると正直心強かったが悔しいので胸に納める。第一ゆいさんが変態筆頭だ。  陽くんに会えたしエビチリも食べたし。今日はご機嫌な日だった。ゆいさんが余計だったがエビチリに免じて許してやることにした。
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