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ある街に名前のない喫茶店がある。なぜ名前がないのか・・・。
それは、この物語の主人公である杉坂美織にネーミングセンスがないからである。
今日もその喫茶店は営業中。
「美織ちゃん、今日はナポリタンが食べたいなー」
カウンター席に座る白髪のダンディーなおじさんがカウンターの向こうにいる女性、美織に語り掛けた。美織は笑顔で返事をし、料理を作り始めた。
「斎藤さん、いつも私のお店でランチを食べてくださってとても嬉しいです」
「あはは、美織ちゃんのナポリタン食べたらファミレスやコンビニなんかのナポリタンは食べれないよー」
そうしているうちにキッチンから香ばしいケチャップの香りがしてくる。カチャカチャと洋食器にナポリタンを移し、冷蔵庫から野菜サラダを取り出しお盆にのせた。美織はキッチンから出て、お客さんの傍に行った。
「お待たせしました、ナポリタンとサラダのセットです」
おじさんが座っているカウンター席にそっと置いた。
「ありがとう、美織ちゃん」
おじさんはナプキンからフォークを取り出して、器用にナポリタンをフォークに巻いて食べ始めた。
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