雪割草

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 いつも、転校して最初の一週間ほど、僕のあだ名は“転校生”だった。  ようやく覚えてもらって、名前を呼ばれるようになって、友達づきあいが始まった頃、僕は次の地方へ旅立った。  いつも、いつも。  それが当たり前で、そのことに疑問なんか持ったことなかった。  それなのに。  彼らは、みんな最初の日から、僕を晋と呼び、友達として扱ってくれた。  もともとサッカーは好きだったけど、何だか、その時、僕は初めて本当のサッカーをしたような気がしたんだ。  パスを受ける。パスを出す。  ただ、それだけのことがこんなに嬉しかったのは初めてだった。  そして、その日のうちに彼らは僕を、助っ人ではなく、正式な部員として迎え入れてくれた。  僕が転校を繰り返している事情を説明しても無駄で、 「一ヶ月だろうが半年だろうが関係ないよ。晋はもうオレ達サッカー部の一員なんだ。お客様でも助っ人でもない」  光基は笑ってそう言った。
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