雪割草

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 今、僕の隣でぶつぶつ文句を言いながらストレッチをしているのは、サッカー部の副キャプテン、小田切和志(おだぎり かずし)。  なんだかんだ言いながら、暖房の入った体育館の一番暖かい場所を陣取っている。 「おら、ちゃんとストレッチやれよ、お前ら。こういう地道な努力が、後で良いプレイに繋がっていくんだからな」  少し離れた場所で必死に腹筋をしながら檄を飛ばしているのは、松ケ瀬光基(まつがせ こうき)。彼はこのサッカー部のキャプテンだ。  思いこんだら一直線の単純明快な性格と、何事にも物怖じしない度胸の良さ。少し喧嘩っ早いけど、みんなが認める立派なキャプテンだと思う。  そしてその光基の補佐(フォローとも言う)を一手に引き受けているのが、先程ラジオで天気予報を聞いていた金谷晴紀(かなや はるき)。  優しげな顔立ちと、柔らかな言葉遣いでみんなの気持ちを和らげてくれる。でも、奥にとても強いものを秘めているのが、その言動の節々からうかがえる。  そうそう、和志はこの晴紀と同じ病院の同じベッドで生まれたんだそうだ。もちろん生まれ月は二ヶ月ほどずれてるけどね。  あと、ゴールキーパーの佐藤と、若松に中川……。  もともと、物覚えは悪い方ではなかったのは確かだけど、僕はたった一日、彼らと一緒にサッカーをしただけで、このチーム全員の名前と顔を覚えていた。
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