離れた手と離さない心

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 卒園式を翌月に控え、病弱な母さんが入院した。  卒園式までには退院したい……そんな希望は叶わなかった。ただ、僕の晴れ姿が見たいという小さな願いなのに……  母さんは涙で頬を濡らし、僕を力強く抱きしめる。  そして、父さんに言った。 「お願い、あなたしかいないの。拓也の手を放しても、心は離さないで……」  幼い僕は、母さんの言葉の意味を理解できなかった。  ***
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