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はじまり
あるうららかな春の日、私たち家族はお正月に出雲大社へ初もうでに行こうということになった。
「どこに泊まろうか…」
ネットで探してみても、出雲大社の近くには古くても値段の高そうな宿ばかりのようでなかなかきまらない。
そうしていると、わが家の大帝である主人が、
「会社で頼もうか」
というのでお願いすることにした。
うちの大帝は旅客業に勤めており、旅行社もグループの中にあったのだ。
大帝にお願いした時には、
「安くて出雲大社に近いところで、温泉があって食べ物がおいしいところがいい。」
と伝えておいた。
ところが、ふたを開けてみると、私たちが宿泊するところはお正月なので祝日料金であり、旅行社からのお勧めもあり、我が大帝の希望もあり、出雲大社からかなり離れたところにある、宍道湖畔のホテル旅館だった。
なぜここを選んだのか大帝にお聞き申し上げると、
「いい温泉につかりたいし、ご馳走が食べたい、最高のところへ泊まりたい。」と仰せになった。
わが家には主人である大帝のほかに、妻である私と、少々体の弱い娘がおり、ややひっそりと暮らしている。
家庭の事情で今まで旅行らしい旅行はしたことがなく、今回の初もうでは家族みんな楽しみにしていた。
当初の予定では、大晦日にうちの近所で除夜の鐘を突きその後出雲へ出発しようということだった。しかし、大帝はじめわが家では弱者ばかり揃っているので初詣一本に絞ることになった。
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