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スプリング・エレジー
私は浮かれていたのだと思う。
久しぶりに化粧をして、真っ白いワンピースに身を包んでぐるっとまわってみせた。ひらひらと花びらのように裾が舞い上がる。
髪は頭の輪郭に沿って編み込み、後ろで一つに結んでみた。動くと三つ編みの先っぽがエビのしっぽのように勢いよく飛び跳ねる。ふと私は鏡を見つめた。いけない。化粧箱から口紅を取り出し、唇を丁寧になぞった。
「ちょっとその口紅、派手すぎない?」
鏡の中の自分がそう自分に問いかける。これでいいんだよ、と私は心の中でつぶやいた。真っ白なワンピースに唇の紅色が映える。
私はいそいそと玄関へ向かう。いつもは体が重く歩くのも一苦労だが、今日は心なしか体が軽い。靴は……、本当は高いヒールでも履きたいけどそこまで見栄を張らなくてもいいか、と履き慣れた靴につま先を入れた。
外は真っ青な空が広がっていた。頬を撫でる風はまだ少しひんやりとしている。家の近くの公園に足を踏み入れると、大きな桜の木が目に飛び込んできた。立派な枝先を上へ上へとのばし、風が吹くたびに桜の花びらが空へと舞い上がる。
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