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Perfume
今日もキミはまとっている。
「あ、お帰り。お仕事お疲れ様」
甘い、バラの香り。
俺の前ではいつもしているソレ。
ソレを嗅ぐと、俺の頭の中のどこかが警鐘を鳴らす。
心なしか内臓も締めつけられる気がする。
キミが持っているのは赤色の、少し中が透ける楕円形のガラス瓶に入っている、香水。
出会った時から香水が好きだったキミは、いくつも香りを集めていたのに、ある時からバラが定番になった。
香りに疎くて、いつも違う香りをまとっていたキミに呆れられていた俺でも、キミが香水を変えなくなったって、分かった。
しばらくは何とも思わなかった。
香水に関しては移り気だったキミが、お気に入りを見つけたんだな、というくらい。
だけどソレは、特別変わった香りじゃなかったから、俺は以前何気なくキミに言ったんだ。
「キミがつけてる香水、女の子に人気のやつ?
どこかで嗅いだ覚えがあるよ」
そう言ったらキミは珍しく、俺の腕の中で居心地悪そうに身じろぎして答えた。
「……そうかもね」
ぎこちなく、微笑んで。
この時、俺の中に言い表せないモヤモヤが現れた。
そんな俺のモヤモヤは、キミと俺の結婚式まで持ち越される。
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