Perfume

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キミにプロポーズする数ヶ月前まで、俺はキミ以外に複数人の女と関係を持っていた。 いわゆる身体だけの関係。 恋人と呼べるのはもちろんキミだけだった、今も昔も。 今となっては顔も名前も覚えていない女たちの中に、ひとりいつも濃い香水の香りをさせている女がいた。 甘ったるい、バラの香り。 キミを呆れさせるほどの匂い音痴の俺でも、さすがに他の女たちとは違う、匂いで識別できたあの女。 キミと結婚すると決意して、全ての女と関係を切り、連絡を絶って。 プロポーズ、両家への挨拶、結納、式の準備。 何事もなく当日を迎え、式を終えて披露宴。 新婦側の友人席に座っていたのは、もうすっかり忘れていた、バラの香りのあの女だった。 「本日は誠におめでとうございます」 キミの高校からの親友だという女は、愛想のいい笑顔で祝福の言葉を述べる。 既に終わった関係、ましてや俺とキミの披露宴、素知らぬ顔でお互い済ませるつもりだった。 ーー俺の隣で美しく着飾った、キミとあの女が抱きしめ合うまでは。 あの女の甘ったるい香りと、キミの花の香りが混ざり合う。 どうして気がつかなかったのだろうう。 キミもあの女も、同じ、バラの香りーー。
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