夢の国へ繋がる扉は風呂場のドア

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パパの場合 フフンフン、フンフンフン♪フフンフン、フンフンフン♪ 有名な温泉の歌を鼻唄で歌いながら帰るパパ。 特に好きな歌ではない。しかし、家に帰ってゆっくり出来ると思うと、必ず脳内でメロディーが巡る。 暖かい家庭と風呂の暖かさには、何か通じるものがあるのかもしれない。 「ただいまー」 「おかえりなさい。ご飯を暖めておくから、先にお風呂に入ってね」 変わらぬルーティン。優しい妻は毎日、同じ言葉で優しく風呂場へ促してくれる。 深夜近くに帰っても機嫌よく帰れるのは、二人の子供達と約束したテーマパークが週末に待っているからだろう。 もう、布団に入って夢を見ているであろう子供達と会う時間は少なく、遊べる時間も少ない。 人は家族サービスだなんていうけれど、パパ自身は、そうは思っていない。 家族が揃う時間は意外と少ない。それに、何よりも大事だと思っている。 風呂へ入る準備しつつも、テーマパークへ行く段取りを巡らせる。 当日は、朝早く車を出して、車の中で軽い朝食をとる。 早起きが苦手な子供達は、ぐずるかもしれない。だが、ひとたび車に乗り込めば目が冴えて元気いっぱいだろう。 「まだつかないの?」 と何度も急かすに違いない。 テーマパークに着いたら、素早く車のドアを開けて「早く早く!」と急かされるのだ。 脳内で家族四人分のチケットを買って入園する。 そんなことを考えながら、風呂場へと繋がるドアをスライドさせた。
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