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ふっと、少女たちの噂話が一瞬途切れた。それは日暮れを待つ空白のようでもあり、彼女たちが恋をするときの繊細なひとつの合意のようにも思えた。ホームに電車が入るというアナウンスがわたしたちの世界を覆う。オレンジ色に点滅する電光掲示板が注意を促す。少女たちはまた唇を開いて噂話を始める。
ざわめきが世界を動かす。夏が待っている匂いがする。
遠く、黄昏が夜を迎え入れようと動き始めていた。
電車がホームに入る直前に、わたしは反対車線に影を見た。
甘やかな黄昏の、桃色の記憶が揺れている。買ってもらったわたあめは、夏の暑さに負けてべたりと潰れて、あの頃のわたしの白い頬を汚したのだった。
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