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満月の輝く湖畔で
大きな満月は白く光り輝き、湖の水面に映ってゆらゆらと揺れていた。
「きれい……」
沙彩はその湖を見て、瞳をキラキラと輝かせた。
その瞳は満天の星空のように綺麗で……
僕は彼女に見惚れていた。
湖畔に吹く風は少し冷んやりとして。
僕は着ていたジャンバーを脱いで、彼女にそっと被せた。
「え、これ……」
「ワンピースじゃ、寒いだろ。そよ風も強くなってきたし」
僕は彼女の着ているワンピースを見て微笑んだ。
白く輝く満月が映し出す緑色のワンピースは神々しいほどに美しく、少し頬を桃色に染めた彼女の顔も堪らなく愛しかった。
「なぁ、小さい頃さぁ」
僕は口を開いた。
「よく、ここに冒険に来たよな。一緒に、家を抜け出して」
すると、彼女は悪戯そうに笑う。
「そうね。それで、二人して、お互いのお母さんに怒られて……私、今でも忘れない」
そして、目を細めた。
「何も、変わらないわよね。この湖畔も、綺麗な満月も、そして、櫂……あなたも」
僕は頷いた。
そして、ゆっくりと口を開く。
「なぁ、沙彩。僕達、ここで……
新しい家族にならないか?」
「えっ?」
少し不思議そうな彼女の瞳を、僕は真っ直ぐ見つめた。
「ここで……満月の映る湖が綺麗なこの故郷でさ、一緒に暮らしたいんだ。
だから、その、つまり……」
しどろもどろになり始める僕を見て彼女はクスッと笑う。
そして、僕の肩に手を回して……
僕の唇には、柔らかい感触が伝わった。
顔をそっと離した彼女は、僕の目を見つめる。
「ええ、櫂。結婚しましょう」
僕は顔を火照らせて、ポリポリと頭を掻いた。
「おいおい。プロポーズの言葉くらい、僕に言わせてくれよ」
そんな僕を見て、沙彩はまたクスッと笑った。
「あなたのそんな所も、変わらないわね」
僕達は、柔らかく微笑み合う。
新しく家族になる僕達を、満月の光が優しく包み込んだ。
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