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はじまり
幼い頃から、写真を撮ることが好きだった。
父親は元カメラマンで、いつも父のカメラをいじって遊んでいた。
その影響で、完全に写真を撮ることが僕の趣味になっていた。
1枚の額縁のなかに、果てしない風景が広がっている。
1度シャッターを切れば、二度として同じ写真を撮ることは出来ない。
僕にしか撮れない写真が撮りたい。
カメラの世界に触れる度に、どんどんとその思いは強くなっていった。
高校2年生の夏休みも終盤に差し掛かったある日、
僕はいつものように写真を撮るために郊外にある公園へと向かっていた。
駅前は休日ということもあって人が多く、首にかけたカメラが人にぶつからないように手で多い囲むようにして歩く。
ふと、周りを見る。
空が眩しすぎるせいなのか、何も良いことがないからなのか、大勢の人が下を向いて歩いていた。
こんなに綺麗な空なのに、見ないなんて勿体無い。
だけど、そんな中で1人だけ、眩しくキラキラと輝く空を見ながら歩く彼女に気がついた。
気がついてしまった。
見とれてしまった。
僕の粗雑な国語力では言い表せないけれど、どうしようもなく彼女に惹かれてしまった。
身体中に稲妻が走ったような感覚に包まれる。
瞬間、僕はカメラを構える。
それはいけない事だとか、撮った写真をどうするのかとか、そんな考えは何も無かった。
ただ、このチャンスを逃してはいけない、今しかない、今なら良い写真が撮れる。
その思いだけが頭の中に溢れていた。
覗いたレンズの向こう側の彼女を、しっかりと捉える。
突然、彼女のうしろから突き抜けるようにして風が吹く。
そして彼女は、カメラを構える僕に気がつく。
今だ。
僕は、シャッターを切る。
「 」
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