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「……」
高揚した気分のまま、カメラを下ろす。
とたんに僕は、ハッと我に返る。
…しまった、やってしまった。
これじゃあまるっきり変質者じゃないか。
彼女がゆっくりと僕の方に近づいてくる。
僕は慌ててカメラを操作し、さっき撮った写真を消去しようとした。
「まって」
いつの間にか僕の前まで来ていた彼女は、カメラの消去ボタンを押そうとしている僕の手を抑えた。
「さっき、私を撮っていたんですよね…?」
「あ…や、そうなんですけど。決して盗撮とかじゃなくて…ただ単に、あまりにも君が…」
「さっき撮った写真、見せてください」
しどろもどろに話す僕に痺れを切らしたのか、彼女は僕の声を遮るようにそう言った。
当然僕に断る理由はなく、消去画面から戻してカメラを渡した。
「ありがとう」
そう言ってカメラの液晶を熱心に覗く彼女。
…とても緊張する。
しばらくしてカメラを僕に返す彼女の瞳は、
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