はじまり

2/4
前へ
/11ページ
次へ
「……」 高揚した気分のまま、カメラを下ろす。 とたんに僕は、ハッと我に返る。 …しまった、やってしまった。 これじゃあまるっきり変質者じゃないか。 彼女がゆっくりと僕の方に近づいてくる。 僕は慌ててカメラを操作し、さっき撮った写真を消去しようとした。 「まって」 いつの間にか僕の前まで来ていた彼女は、カメラの消去ボタンを押そうとしている僕の手を抑えた。 「さっき、私を撮っていたんですよね…?」 「あ…や、そうなんですけど。決して盗撮とかじゃなくて…ただ単に、あまりにも君が…」 「さっき撮った写真、見せてください」 しどろもどろに話す僕に痺れを切らしたのか、彼女は僕の声を遮るようにそう言った。 当然僕に断る理由はなく、消去画面から戻してカメラを渡した。 「ありがとう」 そう言ってカメラの液晶を熱心に覗く彼女。 …とても緊張する。 しばらくしてカメラを僕に返す彼女の瞳は、
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加