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  1  電話のベルが鳴り続けている。担任からの有り難いお電話だ。内容は聞かずとも分かる。今日の補習をサボらないようにという念押しだ。寝ぼけ眼でクーラーの電源を入れると、彼はまたゴミ山の中の布団に潜り込んだ。どうせ、他の部屋の学生は帰省していて誰も居ない。電話のベルを鳴るがままにしておいても迷惑にはならないだろう。     やがて電話のベルが鳴り止む。着信履歴にはやはり担任の名前が表示されていた。時刻は午前九時。  蝉の鳴き声はますます大きくなる。今日も暑い日になりそうだ。こんな日はクーラーの効いた部屋でゆっくり寝るのが一番である。この部屋の唯一の長所は、クーラーがよく効くということだ。まあ、それは狭い、ということでもあるのだが。  部屋の呼び鈴がなったのは、そのときだった。     
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