夜桜とフリージャズとウィルキンソン

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「君の思うように進めばいい」  彼は俺に微笑んだ。  この言葉が俺の不安を吹き飛ばした。  この言葉だけで俺の不安を吹き飛ばすには十分だった。  そうだ、俺は背中を押してほしかったんだ。今のままでいい。お前のままでいい、と。  出会ったばかりの人に自分の一番言って欲しい言葉を言われると、なんだか気恥ずかしい。 「……なんでもお見通しなんですね」 「まあ、大人だからね」 「大人になれば何でも分かるんですか」 「子供よりは分かることも多いだろうね」  子供であることをからかわれているようで、少し不貞腐れる。 「なんか、子供はダメみたいな言い方ですね」 「そんなことはないさ」  そんな俺を慰めるように、柔らかい眼差しで彼は言った。 「今の君は何者でもない、ただの子供だ。でも、だからこそ何者にでも成り得る。僕はもう、僕にしか成り得ないからね」 「……それ、トンチか何かですか?」  彼は、ふっと笑った。 「そうだね、ただのトンチさ」  彼の笑顔を釣られ、俺も笑う。 「さて、そろそろお開きにしようか」  軽く手を降り、彼は背を向けて歩き始めた。 「……あの」  俺の声に反応し、彼は歩みを止めた。 「その……」     
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