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夜桜とフリージャズとウィルキンソン
夜桜とフリージャズとウィルキンソン。
それさえあれば、自由になれると思っていた。
あの、気だるい春のこと。
10年前のあの日のこと。
今年のクラス替えは最悪だった。教師共の「受験を控えた大事な時期なので、よりよいクラスにしましょうね」という言葉が馬鹿らしくなるくらいに。
だいたい、知ってる人間が三人しか居ないなんて確率上おかしいだろ。
そんなことを考えながら俺は自転車を漕いでいた。
周囲は闇、月は雲隠れ、点々と続く街灯の灯りだけが俺を照らしている。
もう少し漕げば、あの公園に辿り着く。俺はより一層、ペダルを強く漕いだ。
辿り着いたのは、小さな公園。
ここの桜は、この町で一番といっても過言ではないだろう。が、あまり知られていないらしく、花見に来る人はほとんどいない。
それにもう日も沈みきっている為、辺りに人影はない。
ただ、春のまだ冷たい風に流されていく花びらだけがこの場所を彩っていた。
自転車を止め、公園のベンチに腰を下ろす。持ってきたウィルキンソン炭酸を喉に流し込み、プレイヤーでお気に入りのフリージャズを再生する。
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