第三章

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 階段の下からか細い声がする。覗き込むと、そこに丸くなって体を小刻みに震えさせている猫が居た。猫の方も気配に気付いたのか、こちらを見上げて、また一声鳴き声を上げた。今にも途切れそうな、悲しげな声だった。  今の季節、山あいにあるこの街は昼と夜との寒暖差が激しい。見たところ衰弱し切っている様子でもあり、このまま放置したら、明日の朝には冷たくなっているかも知れない。それはそれで寝覚めが悪い。  と言う訳で気が付くと、俺はアパートに猫を連れ帰り、乾いたタオルで寝床を作って甲斐甲斐しく世話を焼き始めていた。不思議なことに、あれほど帰ったらベッドにぶっ倒れようと思っていた気分は、どこかに消し飛んでしまっている。  暖房をつけて部屋を暖かくしてやると、ほどなく猫の震えは収まった。が、ぐったりとした様子は変わらない。もしかして、腹が減って動けないのか?我ながらバカバカしいと思いながらもコンビニで猫缶を買い与えてみたところ、最初は鼻をひくつかせて警戒している様子だったが、やがて一口食べ…その後はまさに貪ると言う形容がぴったり来る勢いで食べ始めた。なんだか人間臭い仕草で、思わず俺は笑ってしまった。  そんな自分の様子も併せて考えながら、俺は世の中の猫バカと呼ばれる連中が、どうしてああもバカ丸出しになれるのか、その理由がちょっぴり理解できたような気がした。     
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