もう一つの幸せ

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部屋に戻って、荷物をまとめていると蓮が帰ってきた。 「おかえり」 蓮は頷くと、慶太郎をじっと見つめている。 鼻が赤い。 これは…あれか…。 「おいで」 ベッドに腰掛けて手を広げると、無言で蓮が膝の上にまたがった。 「くっつき虫が帰ってきた」 肩に顔を埋めてピッタリとくっついている。 「…マリちゃん、どうだった?」 「……きーにいちゃんの部屋に行った」 「そうか…」 しばらく抱きしめながら背中をさすったり、髪を梳いたりしていた。 「さぁ、帰る用意しないと…蓮?」 気付けば、腕の中で蓮の肩が小さく震えていた。 泣いてるのか…。 慶太郎は黙って、蓮を抱きしめた。 蓮は…かなりのブラコンだな。 口には出さないけど、桔平さんをマリちゃんに取られたと…そう思っているのかもしれない。 あれだけ色々できてかっこいい兄貴がいたら、そうなるか。 ……血だって繋がってないしな。 やっぱり、オーストラリアへ行く前に桔平さんに牽制しとくかなぁ。 そんなことを思いながら、蓮を抱きしめていた。
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