もう一つの幸せ

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涙が止まらなかった。 もうすぐ慶太郎がいなくなる。 そう思うと、止まらなかった。 桔平とマリを見ていたら、なぜか、ひどくそれを実感した。 昨日の涙も、きーにいちゃんとマリちゃんが遠くに行ってしまったようで寂しく感じたからじゃない。 二人を見ていたら羨ましくて、なんで私と慶太郎はケンカばっかりなんだろうって思って。 いつもニコニコして…私と違ってマリちゃんは女らしくて、きっと、きーにいちゃんも怒らないだろうし、ケンカも少ないんだ。 私と慶太郎なんて、あと少ししか一緒に入れないのにケンカばっかりだ。 もう、会いたくても会えなくなるのに。 こうやって、抱きしめてもらえるのもあと少しなのに。 きーにいちゃんとマリちゃんは、いつでも会えてとても仲が良くて。 私と慶太郎は、もう会えなくなるのにケンカばっかりだ。 昨日の夜、ちゃんと納得したのに。 一人でも頑張るって、決めたのに。 やっぱり、一人は嫌だ。 行かないで、そばにいて欲しい。 言えないから、余計に苦しい。 余計に悲しい。
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