もう一つの幸せ

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「…明日、バレンタインだよ?」 「うん?そうだな。……チョコ、くれるの?」 泣き虫のくっつき虫が顔を上げた。 少し涙の残った瞳で笑っている。 「もうね、用意済みなの。一緒に食べよう!すっごい美味しそうなんだー」 「…俺にくれるんだよね?」 「そうだよ?バレンタインだもん。でもね、あまりにも美味しそうで…いっぱい買ったの。…私にも少しちょうだい?」 慶太郎は蓮を抱きしめた。 何言わずにただ、抱きしめた。 「…ダメ?」 「いいよ。…すっげー楽しみだ。夕飯はどうする?」 「この間のワインバーに行きたいな」 「もうヤキモチ妬かないって約束するならいいよ」 蓮は目を閉じた。 「…もう妬かないもん」 「じゃあ、行こうか?」 「うん!」 もう妬かないよ。 私たちには時間がない。 ヤキモチなんて妬いてる暇がないもの。 あと少ししかないんだ。 二人の時間を大切にするんだ。
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