焦り

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蓮の上で慶太郎が動いている。 目を閉じて喘ぐ蓮の頬にその手が触れた。 目を開けると、ゆっくりと動きながら蓮を見つめている。 頬にある手に触れると、慶太郎の指にはめられた結婚指輪を蓮は撫でた。 「…お揃いだね」 蓮は自分の左手を見つめた。 慶太郎の左手が、愛おしそうに蓮の指に触れる。 慶太郎の胸は激しく鼓動を打っていた。 今の気持ちを言葉には出来なかった。 結婚パーティーを思い付いた日から、それを目標にやってきた。 オーストラリアへ行くことは、結婚パーティーが終わってから考えようと…後回しにしてきた。 結婚パーティーは終わった。 この指輪がその証しだ。 後はもう…オーストラリアへ発つばかりだ。 いいのか? こんなに可愛い声で俺の下で気持ち良さそうにしている、くっつき虫で泣き虫で甘ったれな蓮を置いて行けるのか? 蓮が悲しい時にそばにいれないんだ。 もしまた、熱を出しても…飲み物すら買ってやれないんだ。 本当にいいのか? 連れて行かなくて…本当にいいのか? 離れて暮らすことが…それが…俺たちにとって、本当に幸せなのか? 突然、慶太郎の動きが早くなった。 蓮の甘い声が部屋に響く。 想いをぶつけるように、慶太郎は激しく動いた。 連れて行きたい。 言葉に出来ない想いが届けばいいと思った。 そして、慶太郎は蓮の上に倒れると、強く抱きしめた。
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