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「ねぇ、蓮?」
「……なに?」
そっと髪を梳かれて微睡みかけた蓮の眠そうな声が腕の中から聞こえてきた。
「…………一緒に行こうか…?」
「…うん?」
「一緒に行こう」
蓮の体温が腕に伝わる、胸に伝わる。
オーストラリアに、一緒に行こう。
仕事はやめるんだ。
俺と行こう。
「…うーん?…いいよ…」
いいよ。
いいよ?
いいよ!?
慶太郎は驚いて腕の中の蓮の頬に触れた。
蓮は目を閉じている。
「…明日、一緒に行こうね…寝坊しちゃうから……起こし…て…」
そのまま、蓮は眠りに落ちた。
穏やかな顔で眠ってしまった。
その顔に少し笑うと、慶太郎は眠る蓮を抱きしめた。
違うよ、蓮。
明日の朝の話じゃない。
来週の木曜日の話だよ。
俺は…蓮を連れて行きたい…。
蓮の髪に口元を埋めると、慶太郎は目を閉じた。
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