目の保養さま

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 やがて彼の全身が見えたとき、桜子の心臓がドクンと強く脈打った。 「今日もかっこいい……」  思わず小さくつぶやいてしまう。  他校の制服に身を包んだその人は、友達と話しながら改札を出て、桜子の目の前を通り過ぎて行く。優しそうな顔立ちで、少しタレ目だがイケメンの部類に入るだろう。  校則のゆるい高校のようで、彼の耳には銀色に光るピアス、やや長めの髪もアッシュ系の黄色っぽいおしゃれな色に染めていて、たまにギターケースを肩にかけているのを見るのでバンドをやっているようだ。  彼をはじめて見たとき、桜子の全身にビリビリ痺れるような衝撃が走った。なんてかっこいい人だと目で追ってしまい、それから毎朝、名前も知らない彼を一目見たくて待っている。  恋愛の好きかどうかはわからないが、彼を見ると一日中幸せな気分で過ごせた。 「そんなかっこじゃ風邪ひくぞ」  突然、人の群れの中から声がして、にゅっと伸びてきた手が、桜子のおでこに熱いものを押しつけた。 「ひゃっ」   桜子は驚いて飛び上がった。 「竹下(たけした)先輩!」     
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