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いくら知り合いとは言えお客に助けを求めるのは申し訳ないというか筋違いな気もするし、それに『妙な借り』を作るのも正直、いい気はしなかった。
だが、状況はそんな事を言ってられるほど安閑ともしてられないようだ。
ガン、ガン!
ユーナがドッキング・ベイの閉じられた扉を叩く。
「おうっ! どうした? 今、開けるからな」
意外にも、タローからの反応は早かった。
プシュー……と音がして、ドッキング・ベイが再び開く。
「……何かあったのか?」
怪訝そうな顔でタローが尋ねる。
「動き出す気配が無かったから『ヘンだな』とは思ってたんだが」
「すいません、実は電源が入らなくて……申し訳ないんですが、少し見てもらえたらと思って」
申し訳なさそうにユーナが頭を下げる。
「電源? そうか、分かった。工具をとってくるから、チョット待っててな」
タローは引き返すと、倉庫から工具箱を持ってきた。
「さ、いくぞ。操縦席に案内してくれ」
「では、こちらへ」
ユーナがタローを案内して操縦席に入る。
「これか、どれ? なるほど、確かに電源が入らないな」
タローが電源スイッチをパチパチと入れ直してみる。
「ああ、電圧が来て無い。ほら、見てご覧。そもそも主電源スイッチに電圧がノってないだろ?」
タローがユーナに指し示した計器の指針は『ゼロ』を表示していた。
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