星の灯台に宅配便来たる

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 ユーナが今から接岸しようとしている『その宇宙灯台』はその中でも地球から最も遠い部類に入るものだ。何しろ地球から7.8億kmも離れた先にあって、光ですら30分以上の時間が必要という途方の無い彼方なのだ。  地球からまともに行けば、最新鋭の惑星間航行船ですら最短でも6ヶ月を必要とするという。 「あー……やっと、到着したわね。今回の航海も、此処が最後の配達先か」  ユーナは感慨に浸る間もなく連絡船の補助エンジンを操作し、宇宙灯台とのドッキング体勢に入った。そして無線機のスイッチを入れ、やや緊張しながら相手に通信を入れる。 「ハロー! こちら『コズミック運輸』です。タローさん、居ますか? 定期の物資を持って来ました」  いつも思う事だが。  ユーナに限らず、こうした有人宇宙灯台を訪れる人間にとって最も緊張する瞬間が、この『訪問時の声掛け』なのだ。  何故なら、孤独に生きている灯台守が『その瞬間に生きている』という保証は何処にも無いからだ。  万が一にも『相手から反応が無い』となれば、自分が『第一発見者』として『遺体』を確認しなくてはならなくなる。  そうした時、相手が『単に倒れているだけ』なら『まだ』良いとしなければならない。過去には『機械に挟まれて五体がバラバラだった』というケースもあったと聞く。  出来ることなら『そういう事態』に巡り会いたくないと思うのは、誰しも同じであろう。     
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