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「はい、今回はトンボ帰りですね。少しでもゆっくりしていけたら良かったんですけど……すいません」
いつもの配送であれば、物品の受け渡しが終わった後に『休憩』と称して談笑する時間があるものだが、今回は人手が足りていないという事もあり、ある意味それが『申し訳ない』という気もする。
だが、逆に言えばタローのような『オジサン』と一緒に居たところで自分と話が合うとも思えないし、返って『トンボ帰り』の方が気が楽と言えなくもなかった。
「そうか。忙しいんだな、ご苦労様。じゃ、少しでも手伝うよ」
くるっと背を向けて、タローが連絡船の貨物室に向かって行った。
宇宙灯台が孤独なのは、言うまでもない。他人の顔を見るには年に数回の定期連絡便が来る機会しかないのだ。どれほど孤独に強い人間でも、それは辛い事だろうと思う。
なので、出来ることなら少しでも長く居て『気を紛らわす』手伝いが出来れば良いのだろうが……。
少し寂しげなタローの背中を見ながら、ユーナは申し訳ないように思えた。
「あ……すいません、手伝ってもらって助かります」
ユーナがタローの後を追う。
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