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「……それにしてもこんな僻地と言ったら失礼ですけど、地球から遠く離れた所で『一人暮らし』なんて、凄いですね。私には、とてもそんな勇気はありません」
「ははは! 変わってンだよ、オレは」
タローが笑い飛ばす。
「でも……会社の先輩が以前、こうした常駐型の宇宙灯台で『遺体を発見した』って話をしてて。それを聞いてからこっち、何だかコワいんですよ」
ふふ……と、タローが自虐気味に笑う。
「そうかい。じゃぁオレの時は猫みたいに、せいぜい『隠れて死ぬ』ようにするよ」
「いや、そういう意味では」
少々マズい言い回しだったか、とユーナは反省した。
「まぁ何だ、こうして孤独を謳歌しているのは別に『勇気』とは言わんよ。本当の『勇気』ってなぁ、自分が何かを決断した時に『やってくる結果』を全てチャンと受け止める事だ、とオレは思うな。世の中にゃあ『都合の悪い結果』から逃げ回るヤツらが多いからね」
タローはそう言って、くるりとユーナに背を向けた。
「じゃぁな、社長にヨロシク言っといてくれや」
タローが後ろ向きのまま、軽く手を振って宇宙灯台の方へ戻って行く。
「はい、ありがとうございました! ではまた、よろしくお願いします」
ユーナは笑顔で軽く頭を下げてから、ドッキング・ベイのハッチを閉じた。
「さて……」
連絡船の操縦席に戻ったユーナが操作電源のスイッチを入れる。
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